Share

第19話 一体何の真似?

last update Last Updated: 2025-05-06 09:09:32

「入口付近に立っているな。通行の邪魔だろう?」

金色の髪の青年は私をジロリと睨みつけた。……確かに言われてみればそうかもしれない。

「はい、どうも申し訳ございませんでした」

素直に頭を下げた。

「何!?」

「え!?」

すると青年と女性が意外そうな声を上げる。……どうしたのだろう? 自分の方から退けと言っておきながら、いざ私が頭を下げただけで驚いた顔をするなんて。

首を傾げつつ邪魔にならない様に彼等から離れた場所に移動した。そして先程の青年の方を見ると、唖然とした顔でこちらを見ている。

全く何なのだろう? あのグループはどう見ても私に敵意を持っているようなのでなるべく関わりたくは無かった。そこでわざと視線をそらせてジョンの姿を探していると、何故か彼等がこちらに向かって近づいてくる。

そして私の真正面に立つと金の髪の青年が意地悪そうな笑みを浮かべた。

「おい、ユリア。何故そんなところにつっ立っているのだ? こちらに構わず空いている席を探してさっさと座れば良いじゃないか? それともいつものように俺たちがテーブルに付くのをここで待つつもりだったのか?」

「え?」

あまりにも突拍子も無いことを言われ、私は正面からじっと青年の顔を見た。一体この人は何を言い出すのだろう?

「あの……それは一体どういう意味でしょうか?」

私は彼の言っている意味が分からずに恐る恐る尋ねた。すると金の髪の青年が腕組みをする。

「とぼけるな。まさか俺たちが今迄何も気づいていないとでも思っていたのか? もしそうだとするとおめでたい女だ。いいか? 知っているんだぞ? お前がいつも俺たちをこの場所で隠れて待ち伏せしているのを。そして着席した頃を見計らって、さも偶然を装って近づいてきては図々しく同じ席に座ってきているではないか」

「え……?」

その言葉に耳を疑った。まさか記憶を失う前の私は1人で食事をするのが嫌で、恥ずかしげもなくそんな厚かましい真似をしていたのだろうか? むしろ今の私にとっては、招かれざる場所に顔を出すくらいなら、1人で食事をしたほうが10倍マシだ。過去の自分がとても恥ずかしくなり、私は素直な気持ちで謝った。

「それは大変申し訳ございませんでした。もう二度とその様な恥ずかしい真似は致しませんし、あなた方には極力近づかないと約束しますのでどうぞお許し下さい」

私はこの学園で嫌われている。低姿勢
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした   第81話 兄妹喧嘩?

    「え!? 本当に……本っ当にお2人は兄妹なんですか!?」2人の顔を何度も確認しながら尋ねた。「ああ、そうだ」「嘘なんかついてどうするんです?」見れば2人とも腕を組み、足を組むという……全く同じ姿勢で此方を見ている。うん……確かに……似ていると言われれば似ているかもしれない。「なら、何故言わなかったのですか? 兄妹の関係だって」「だって言う機会がなかったからな?」「ええ、そうね」2人は顔を見合わせながら頷く。に、似てる……。やはり2人は行動が似ている……。「だ、だけど……マテオ達はあなた方が実の兄妹だってこと知りませんよ? 少なくとも……そう、マテオは!」するとベルナルド王子の顔つきが険しくなる。「……ユリア。マテオと妙に仲が良くないか?」「え?」いきなり何を言い出すのだろう?「あ、やっぱり? 私もそう思ったわ。昼休みにマテオは慌ててユリアさんを追いかけて行ったもの」「え?」あまりにも突然の会話に言葉を失う。「ユリア……ひょっとするとお前、マテオと特別な関係だったのか?」「いやいや、そんなはずないでしょう?」「そうかしら……何だか怪しいわ……」テレシアまで妙に疑いの目を向けてくる。「そ、そんなことよりも、テレシアさんは半年前にこの学園にやってきたじゃないですか? それまでは他の学園にいたんですか?」すると……。「ゴホンッ!いや、実はテレシアは…」「そう、私は妾の子なのよ。母は平民出身でずっと王宮暮らしを拒んでいたの。堅苦しい王宮生活は嫌だと言ってね。だから私も町で平民として母と暮らして、平民達が通う学園に通っていたわ。けれどベルナルド王子が私を城へ呼んだのよ」「ああ、テレシアには正当な王族の血筋が流れているからな……やはりいつまでも平民の暮らしをさせるわけにはいかないと思って半年前に説得して城に連れてきたのだ」「でも私は平民の暮らしが長かったし、いまさら王女のようにも振る舞えないから、なるべくは秘密にしたかったのよ」「だから俺と同じ学園に通わせて、そばに置いてボロが出ないようにしていたんだ」「ちょっと、ボロって何よ? ボロって」「何だ? 事実だろう?」「そんなことないわ、私は完璧に出来るもの」「ふん、どうだかな」「何だよ?」「何よ?」睨み合う2人を私は呆然と見ていた。もはや2人は完全に馬車の中で

  • 記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした   第80話 意外な関係

     ガラガラと町中を音を立てて走り続ける馬車。一体、この状況は何なのだろう……?「「「……」」」馬車の中は奇妙な沈黙に満ちていた。ベルナルド王子は膝を組み、腕を組んで私をじっと凝視しているし、ベルナルド王子の隣に座るテレシアはふくれっ面で腕を組んで私を睨んでいる。ううう……降りたい。今すぐこの馬車を飛び降りて、1人で屋敷に帰りたい。大体、今まで私が知る限り一度たりとも一緒に帰ったことなど無かったのに何故私はこんなところにいるのだろう? やっぱりどこかで降ろして貰おう。このあたりなら辻馬車を拾えそうだし……。「あ、あの~……私、やっぱり降りま……」「駄目だ」即答で却下された。「?」「何だ、そんなに露骨に嫌そうな顔をするな。気分が悪い」だったら始めから人を乗せなきゃいいでしょう?……とは、決して口に出せないけれども。「ほら……ユリアさんもああ言ってることだし……降ろしてあげましょうよ」テレシアが王子の組んでいる腕をぐいぐい引っ張っている。「それは無理だ。何としてもユリアを屋敷へ送り届ける」ベルナルド王子はぶすっとしたままこちらを見る。「フン。何よ……」テレシアはますますふくれっ面をしてそっぽを向いてしまった。それにしても……。うわぁ~知らなかった……。この2人、こんな感じで話をしていたんだ。「あの……ところで何故突然私を屋敷へ送り届けることにしたのですか?」王子と私は婚約者同士では……なくなって……。その時、肝心なことを思い出した。そうだ! 婚約破棄についての話だ!「何だ? どうかしたのか?」ベルナルド王子が尋ねてきた。「はい、そうです。私と王子の婚約は……」そこまで言って口を閉ざした。しまった。今ここにはテレシアもいる。こんな重要な話をテレシアのいる前で話すわけには多分いかないだろう。「何だ? 言いかけておいてやめるなんて」「ええ、そうです。最後まで言ったらどうですか?」何故か2人で責めてくる。「い、いえ…だ、だったら尋ねますけど…何故私を突然送ることにしたのですか?」話題を変えてしまおう。「決まっているだろう? お前を無事に屋敷に送り届ける為だ」「え?」するとテレシアが言った。「ユリアさん……本当は馬車事故に巻き込まれて学園を休んでいたんですよね?」「え? 何故そのことを?」「職員室の前を

  • 記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした   第79話 恨まれるのは筋違い

     キーンコーンカーンコーン…… とうとうベルナルド王子に会う前に午後の授業開始の予鈴が鳴ってしまった。マテオとアーク、あの2人のせいで王子に会えるチャンスを失ってしまった。「……」私はチラリと後ろの席に座るノリーンを見た。きっとノリーンはベルナルド王子とテレシアに邪魔者扱いされながらも一緒に昼食をとったのだろう。何だかノリーンが浮かれているように見えた。ふぅ……。私は心の中でため息をついた――**** 16時――本日の授業も全て終了した。ノリーンと関わりたくは無かったので大急ぎで片付けを始めていると、こちらに近付いて来る気配を感じた。ちょっ、ちょっと! お願いだからこっちに来ないでよ!私はもうベルナルド王子とは無関係なのだから! 多分……。そう思った時。「ユリア様」「ユリア!」ノリーンと同時に教室の入り口で誰かに大声で呼ばれた。「「え?」」私とノリーンは声の方向を振り返り……目を見張った。何と私の名を呼んだのはよりにもよってベルナルド王子だったのである。そして何故かその隣にはテレシアまでもが一緒にいる。何故? どうしてベルナルド王子がこの教室へ?しかもよりにもよってノリーンの前で私を呼びに現れるなんて……!テレシアとベルナルド王子は恋仲で、婚約者である私と三角関係だと噂になっている為、クラスメイト達は興味深気に私たちの様子をうかがっている。「ユリア、一緒に帰ろう。お前を迎えに来た」そしてここでベルナルド王子が口を開く。なんとベルナルド王子は私のクラスメイト達の視線を意に介せずに堂々と誘って来た。そしてテレシアは明らかに不満そうな顔を私に向けている……。いや、テレシアだけでは無い。やはりノリーンが無表情で私を見ている。いやいや、それはちょっとおかしいでしょう!? 誘ってきているのは王子なのに、何故私が2人から一方的に恨まれなければならないのだろう?ここはやはり断るに限る。「あ、あの……折角のお誘いですが、遠慮させていただきます」その途端に教室がざわめく。まぁ無理も無いだろう。記憶を失う前の私は今まではどんなに邪険にされようとも王子の側から離れなかったのだから。その私が王子の誘いを断ったのが信じられないのだろう。「何故だ?」全く空気の読めないベルナルド王子が眉間にしわを寄せながら質問してきた。この王子はテレ

  • 記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした   第78話 マテオの豹変

     話も終わり、2人でカフェを出るとマテオが尋ねてきた。「ユリア、これからどうするんだ?」「そうね、とりあえずベルナルド王子の所へ行くわ。まだ昼休み終了まで時間はあるし。いつも昼休みが終わるまであなた達は何処にいるの?」「俺たちは大抵生徒会室で時間を潰しているけどな」「そう。それじゃ行ってみるわ」生徒会室に行く為に歩き始めると、当然の如くマテオが後からついてくる。「なぁ。王子のところへ行ってどうするんだ?」マテオが質問してきた。「私達、婚約解消していますよね? って尋ねに行くのよ。10日以上前に婚約破棄して下さいってお願いしているから」「え? そうだったのか? 知らなかったな〜」マテオの言葉に私は嫌な予感がした。ひょっとすると私とベルナルド王子は婚約解消がまだされていないのだろうか?「……だとしたら大変だわ。急いで王子の所へ行かなくちゃ」「ユリア。婚約解消していることが分かった後はどうするんだ?」「そうしたらノリーンの前でさり気なく言うわ。『私、ベルナルド王子と婚約解消したのよね〜』って感じでね」「そうか、それでノリーンのターゲットを自分からテレシアに向けさせるんだな? 流石は悪女のユリアだ」マテオは何故か嬉しそうに言う。「……ねぇ。ひょっとして他人事だと思って楽しんでいるでしょう?」隣を歩くマテオを恨めしそうな目で見た。「いや、まさか。そんなはずないだろう?」「だってさっきから笑って話をしているじゃない」絶対にマテオは私が困っているのをみて喜んでいるに違いない。「だから、違うって。むしろ俺はホッとしてるんだよ。王子と婚約解消し、ノリーンの恨みも回避出来るなら、こんな嬉しいことは俺にとってまたとないことだからな」そんなことを話している内に私とマテオは生徒会室の側までやってきていた。「ねぇ。何故マテオにとってまたとないことなの?」どうにもマテオは先程から訳の分からないことを言ってくる。何

  • 記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした   第77話 私の王子様?

    「俺達はなかなか生徒会室に戻って来ない王子を首を長くして待っていたんだ。そしてもういい加減帰ろうかと思った時に……」「ちょっと待って、生徒会の仕事をやらないで貴方達は帰ろうとしていたの?」するとマテオが口を尖らせた。「おい、ユリア。話が違うぞ? 話の腰を折るなって言っただろう?」「あ、ごめんなさい。つい気になってしまったから。分かったわ、口を挟まないようにするから」言いながら私は唇を親指と人差し指でムニッとつまんだ。「プッ。何だよ……それ」マテオは少しだけ笑うと再び話し始めた。「帰り自宅を始めていた時に王子があの女……ノリーンを連れて生徒会室へやって来たんだよ」「え? そうなの?」「ああ、どうやら同級生に虐められて落とし穴に落されてしまったそうだ。ノリーンは爵位も低いし、見た目もまぁ地味だからな。格好のターゲットだったんだろう? ユリアは知っていたか? ノリーンが虐められていたこと」「知っていたと言うか、覚えているかって尋ねて欲しいわ。尤も生憎何も覚えていないけどね」「そうか……それでたまたまそこを王子が通りかかって落とし穴に落ちていたノリーンを助け出したんだ。酷く動揺していたらしいから、とりあえず生徒会室へ連れてきたらしい」「そう、でも何故王子は生徒会室へ連れてきたのかしら?」「それは俺たちを待たせて悪いと思って戻ってきたんじゃないのかな? 何故生徒会室へ連れてきたのかは不明だが、王子は俺たちにお茶を煎れるように命じてきたんだ」「はぁ……なる程……」やはりマテオには根っからの腰巾着精神が染み付いていしまっているのだろう。恐らく王子はマテオ達にお茶菓子を用意させてノリーンを押し付けようとしていたのかもしれない。でもそこは口にしないけど。「まぁ、それで俺たちは王子に命じられるまま2人にお茶とお茶菓子を用意してやったのだが、その頃にはノリーンはすっかり王子に入れ込んでいたように見えたな。きっとノリーンにとって自分の王子様に思えたんじゃないのか?」「いやいや、実際ベルナルド王子は王子様でしょう?」「それでいきなりノリーンは俺たちがいるにも関わらず王子に言ったんだよ。『ベルナルド王子様、好きです! お付き合いして下さい』って」「ゴホッ!」思わず、いきなりの言葉にカフェオレを吹き出しそうになってしまった。「おいおい、大丈夫か?」

  • 記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした   第76話 ちゃんと聞けよ?

    「何だ、その辺の記憶は戻っていないのか……と言うか、ひょっとして知らないのか?」フォークで器用にクルクルとパスタを巻き付けながらマテオが尋ねる。「さ、さぁ……どうなのかしら。記憶が戻っていないからなのか、それとも私が知らないところでノリーンが……って、ちょっと待って。そもそも何故私にノリーンのことで警告しようと思ったの?」尋ね終わるとサンドイッチをパクリと口にした。「そうか……まずはそこからユリアに説明しないとならないのか……。面倒だな」マテオは最後の台詞だけ小声でボソリと言った。「ちょっと……今、面倒だなって言ったわね? 聞こえていたわよ?」「あ……聞こえてたか。仕方ねぇな~……」マテオはパスタをゴクンと飲み込む。「ちょっと、貴方本当に貴族なの? いくらなんでもガラが悪過ぎよ?」「仕方ないだろ。子供の頃から王子の側仕えなんてさせられていればガラだって悪くなるさ」「成程。マテオの性格が歪んだのはベルナルド王子のせいなのね? 了解したわ。早くノリーンの話を教えてよ。あ、すいませんカフェラテ一つ下さい」たまたま食器を下げに来た男性店員に注文をお願いした。「おい、誰が歪んでいるって? あ、すみません。なら俺にはコーヒーを頼みます」マテオは肘をつきながら注文した。「かしこまりました」男性店員が去ると、再び私はマテオに尋ねた。「ねぇ、ノリーンのことで何か知っているなら教えてよ」「ああ、いいぜ。初めて王子とノリーンが接触したのは1年近く前の出来事だったんじゃないかな……」「え? そんな前からノリーンと王子は良い仲だったのね?」思わず身を乗り出す。「おい、落ち着けって。別に良い仲ってわけじゃない。初めて会話を交わした日って意味で言ったんだよ。だいたい、ノリーンは今までユリアの見ている前で王子にベタベタしていたことがあったか?」「だから、その辺りの記憶はまだ戻っていないんだってば」するとそこへ……。「お待たせいたしました」2人分の飲み物を持って店員が現れ、それぞれのテーブルの前に飲み物を置いていく。「ごゆっくりどうぞ」店員が頭を下げて去っていくと、早速私はカフェラテに手を伸ばし、一口飲んだ。「う〜ん……美味しい」「そうか、良かったな」マテオもコーヒーを一口飲み、顔をしかめた。「なんだ……苦すぎだな……」「フッ。お子様

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status